売肉専門に堕落す
日本の太夫が花魁となり、花魁が娼妓となり、一方芸者が芸妓となり、それが高等淫売とか大正芸者とかいふやうに、時代を追ふて下落し、意地とか張りとかいふことが全くなくなった如く、支那の妓女も、永い月日の間遂には売肉専門となって昔の悌を見ることが出来ないやうに墜落してしまった。妓女に関する詩歌を見ると、最初は「聴妓」の詩で、其楽を賞し、次では「観妓」となりて其面貌を賞し、下っては「宿娼」の詩などができるやうになった。しかし、昔の訪客文人と官妓との遺風は、遂に支那人をして妓女に対し、間違った観念を生ずるに至らしめた。其観念より生ずる余毒は延いて今日に至り少しも已むことが無い。