燈市燕飲の光景
妓女は東西両院のみでなく、当時の「燈市」一帯にも居たと見え、燈市の絵書にも遊客が妓女と戯れて居る光景を描いたものが多い、又孌童即ち男妓も居たと見える。
唐士名所図会の編者は、燈市の光景を次の如くに諸書から訳出して居る。
左右の店毎に高き楼を構へ、燕飲の所とせり、翠の瓦月に照り、朱の闌干日に映し掛わたしたる珠の簾の、春風に動搖たる此間より、窈窕たる美女の媚きたる、錦の帳せし其下には、孌童の笑を含めるすべて心憎からず、客人緋の懼瑜に座をしむれば、はやく爵を飛す鬱金の美酒、詩を賦し韻を和し、或は舞ひ、或は唱ひ、酔て了髻に戯るゝあり、耐ずして眠り倒るるあり、万興尽きず寔に聖代の娯楽なるかな
当時の光景は、ざつと斯んなものであつたらう。
燈市詩 明 范景文
御講春暖漲氷絲、風候沙吹日影移、珠綴九徽光燦爛、張燈不待月高峰、王孫約隊簇金貂、玉勒青◯綺陌驕、文具珊瑚看不尽、東華門外市三条、朱楼一帯鬱嵯峨、陣陣香風観綺羅、龍燭薫風喧不夜、天街到処月明多、月明処処度笙蕭、春色分明念四橋、有酒勤君須尽酔、百年龍待幾元宵。