「花酒」の当日と「竹戦」
偖て前述の準備も整ふて愈々「花酒」の当日となる。花酒の主人は、一足先きに妓館に詰掛けて、客の到るを待ち搆える。そうして一々相手の妓女を紹介し、妓女は又当日招いた朋輩を引合する。客が揃ふと着席。主人は室の入口、妓女は其右に座を占める、挨拶方式は、普通の場合と変つたことは無い。此場合客は、其馴染の花妓を他班から聘ぶことが出来る、其方法は「叫局」と同様で即ち「過班児」をするのである。其花代は之を聘んだ客が負担し、其車飯だけを、花酒の主人が支払ひすることとなって居る。花酒は、大概宴会が有つた二次会の場合にやることが多い、そうで無いとしても、料理の最後まで居るのは通でない、イゝ加減な潮時を見計って中座する方がよいといふことである。それは一は粋を利かせて「おひけ」を早くさせることと、一は妓館に料理の儲けを多くさせるためであるといふ。
茲で一寸申添へて置きたいのは「花酒」の代りに、花酒の意味にて「打牌」即ち花合戦をやることがある。此方法は近く出版する「支那の賭博」に就て詳述する。打牌の場合の招待状は、花酒の際の「酒叙」の二字を「竹叙」に改むればよいのである。「打牌」のことを「竹戦」といふから竹叙と更くのである。その場合は車飯其他も花酒と同様である。妓館の所得としては抽頭児(テラ銭)が有る、その額は大概一割と定って居る。
第三形式
月之△日(星期△)下午 △鐘酒叙
光
中野江漢謹訂
席設△△胡同△△△班