班子の構造と彩綢
妓館の構造は普通の住宅と変りは無い。たゞ門の左右に「清吟小班」と刻した、横三四寸長さ七八寸の真鍮の表札が懸げてあるので、妓館たることを知ることを得る。又表札には必ず清吟小班の上方に「江蘇」とか「京兆」とか「津門」とかいふ文字が刻してある。これに拠って、其妓館は何れの妓女を収容して居るかゞ解る即ち「南班」と「北班」とが一目明瞭となるのである。
妓館には前記の表札のみならず、門の左右の壁、又は門上に真鍮又は木板、或は木枠を附けた彩色の紙片に、妓名即ち源氏名を書いた札を懸けて、嫖客の視線を引いて居る。恰も日木の遊廊に於ける源氏名札と同様である。札は横又は縦ありて、皆探りたる布を帯の如くにして結び合したるものを以て囲んで居る、これを「彩綢」と称し、其色彩の配合によって妓の格が区別されて居る。(口絵参照)