支那の売笑
五、清吟小班

料理屋に妓女を呼ぶ方法

支那の妓女は、日本の芸妓の如く、杯盤の間に周旋して酒を侑める様なことはないが、酒宴を開いて妓女を聘することは出得る。其方法は大概の科理屋には「局票」又は「局条」といふ印刷物が供へてある、大は一定してないが普通横三四寸縦五六寸位のものである。此印刷物の余白に聘んとする「妓女」の「妓名」と「班名」と現在自分が居る科理屋の「室号」と、自分の「姓名」とを記入して夥計に度すのである。局票には客自身が発行(第一形式)するのと、料理屋から発行(第二形式)するのと二様ある、料理屋の方は御定連で顔の売れた者などが料理店の夥計に「俺がそうつたといつて△△班の△△を呼んでくれ」と腮の先きで命ずる側である。その形式は図のやうである、文字の右に△を附したものは客が記入したものである。

妓女を酒席に招くことを「叫局」又は「叫条子」といふ。聘ぶ妓女は勿論馴染即ち「相知」でなからねばならぬ、叫条子を出しても知らない客であれば、断るのが普通である。妓女に面識ある友人の名を借りて聘することも出来得る、これを「借条子」といふ、其場合には前記の「票局」の末端自己の姓名の下に借某姓(友人の姓名)の字を認むればよい。妓名の上に「貴相知」即ち「お馴染の」と書けば更に解りよい。又は友人の紹介で叫局をする場合がある、其時には局票の末端に「某代」の二字を記入するこれを「荐条子」といふ。

何々胡同

何々班招朗々校書

来何々胡同何々楼

第何座

侍酒勿延

中野江漢発

第一形式

中野先生 特招

何々班何々(妓名)速来

何々胡同何々楼何号

侍酒勿延

何月何日何鐘

第二形式

五、清吟小班

  1. 班子の所在地
    1. 八大胡同の名称
    2. 八大胡同の班名
    3. 八埠に遊ぶ道筋
  2. 班子の構造と彩綢
  3. 芸者買の順序
    1. 男衆を亀奴と呼ぶ
    2. 妓夫太郎の任務
    3. 芸妓屋の門を入る
    4. 脂粉の香漂ふ
  4. 引附部屋に案内さる
    1. 煤球児の臭ひ
    2. 室隅の洋床
    3. 総てが挑発的
    4. 身も心も落着かぬ
  5. 見客と芸妓の顔見せ
    1. 交渉の第一歩
  6. 客も妓も懸命の場面
    1. 改天見と一廻りしてから
    2. 変体色情狂
  7. 撰定が済み初挨拶
    1. 妾を可愛かりて下さい
    2. 嫖客の得意
  8. 愈々本部屋入り
    1. 身元調べ
    2. 煙の次に茶
    3. 乾いたものが湿ふ
    4. 花柳界で大事な縁起
  9. 妓女の歌と客の聴方
    1. 昔の点曲児
    2. 歌の撰択が済み叫師伝
    3. 胡琴児的来る
    4. 師伝銭の額
  10. 茶をすすつて芸者遊び
    1. 打茶囲と盤子銭
    2. 廻し客は取らぬ
    3. 恋の鞘当は無い
    4. 見立替へを許さぬ
  11. 料理屋に妓女を呼ぶ方法
    1. 局票の書き方
    2. 叫条子と借条子
    3. 友人の紹介荐条子
  12. 支那の芸妓はお酌をせぬ
    1. 客から妓女に敬意を表す
    2. 芸妓相手の乱舞は出来ぬ
  13. 他班の馴染を呼ぶ色男
  14. 泊り込までの道程
    1. 肉の取引が成立
  15. 芸も売れば身も売る
    1. 支那の妓女に対する誤解
  16. 正式に泊り込む手続
  17. 縁結びの祝宴
    1. 花酒の招待状
  18. 花酒費の一覧表
    1. 枕金の相場
  19. 花酒の当日と竹戦
    1. おひけとなって吃客飯
  20. 芙蓉帳裡巫山の夢
  21. 客に対する観念と待遇振り
    1. 支那国民性の一端
    2. 振るといふことがない
  22. 節期の無心と吝な客
    1. 上車と下車
  23. 花酒抜きの情意投合
  24. 外国人は軽便で持てる
    1. 花柳竹技詞
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