料理屋に妓女を呼ぶ方法
支那の妓女は、日本の芸妓の如く、杯盤の間に周旋して酒を侑める様なことはないが、酒宴を開いて妓女を聘することは出得る。其方法は大概の科理屋には「局票」又は「局条」といふ印刷物が供へてある、大は一定してないが普通横三四寸縦五六寸位のものである。此印刷物の余白に聘んとする「妓女」の「妓名」と「班名」と現在自分が居る科理屋の「室号」と、自分の「姓名」とを記入して夥計に度すのである。局票には客自身が発行(第一形式)するのと、料理屋から発行(第二形式)するのと二様ある、料理屋の方は御定連で顔の売れた者などが料理店の夥計に「俺がそうつたといつて△△班の△△を呼んでくれ」と腮の先きで命ずる側である。その形式は図のやうである、文字の右に△を附したものは客が記入したものである。
妓女を酒席に招くことを「叫局」又は「叫条子」といふ。聘ぶ妓女は勿論馴染即ち「相知」でなからねばならぬ、叫条子を出しても知らない客であれば、断るのが普通である。妓女に面識ある友人の名を借りて聘することも出来得る、これを「借条子」といふ、其場合には前記の「票局」の末端自己の姓名の下に借某姓(友人の姓名)の字を認むればよい。妓名の上に「貴相知」即ち「お馴染の」と書けば更に解りよい。又は友人の紹介で叫局をする場合がある、其時には局票の末端に「某代」の二字を記入するこれを「荐条子」といふ。
到
何々胡同
何々班招朗々校書
来何々胡同何々楼
第何座
侍酒勿延
中野江漢発
第一形式
中野先生 特招
何々班何々(妓名)速来
何々胡同何々楼何号
侍酒勿延
何月何日何鐘
第二形式