取引前の見合と警察の取締
暗門子の客引が、仲介者となり女の取引をなす前に見合をすることがある、日本でも口入屋に妾の周旋を依頼すると必ず見合をすると同様である、其場所は男の家に於てすれば至極便利だが、差支ある場合は、中央公園とか城南遊園とか又は新世界、東安市場、勧業場等に於て時を定めて会合する。北京に於ては一二の劇場を除く以外は必ず男女の席が劃然と区別されて居る、例令夫婦親子と雖も男女が同席することは絶対に出来ぬのである。それが、公園は勿論料理店茶館等に於ては男女合座することが出来得るのである、それを利用して見合ひをなし、密会をなすことが流行して来たそうである。
現に京師警察庁は、其取締を厳にして、男女の合座を禁止したといふことである、「北京曉報」(一〇、八、二六)に次のやうな記事が載つて居る
△難道女子都是暗娼嗎
京師警察庁、因査内外城各飯館因售売女座、有籍此転暗娼、亦有折白党従以為聚会之所者、弊端発生、有傷風化、現擬厳訂規則、仿照管理戯園章程、不准男女合座、刻已頒布実行。
是を見ると暗娼又は拆白党(日本の不良少年団の如きもの)の密会所となり弊害発生して、風化に害ありといふので、男女合座を准さぬやうになつたといふことになる。同紙の記者は其見出の「難道女子部是暗娼嗎」とは「それでは女は皆暗娼か」と憤慨して居るが、京師警察庁が女を都て暗娼と見做す位に北京の風儀は、乱れ暗娼の跋扈が甚しいのである。