暗門子の客筋
暗門子が、客を呼ぶには相当に苦心を要する、公娼の如く公然門戸を張つて娼業を営むのと異り、他人に知らしめざるやうにし、又警察の目を盜んで、絶対秘密に行動せねばならぬのである。若し其巣窟を其筋から探知され、危険になつて来ると忽ち移転して姿を暗まして了ふ、だから一定の場処に永住するといふことが無い、しかし移転をする時には御華客には、内々で通知するといふから、客筋には変化はないのである。暗門子の客筋は之を三種に分類することが出来得る、即ち
一、華客の紹介に拠て来るもの
二、客引の勧誘にかゝるもの
三、自身喰へ込むもの
等であるが、その内第一の華客の紹介に拠つて来るものが其大部分を占めて居る。大概の暗門子は紹介なしでは寄せつけぬことは、前に度々述べた通りである。
第二の客引の勧誘に拠るものにも種々ある、客引を専門にして居る男女と副業にして居る旅館と料理店等の夥計、又は車夫等がある、客引専門は人集りの場所や停車場学校の附近に出張して辣腕を振ふのである、其方法にも亦数種ある。