支那の売笑
九、私娼(密淫売)

巧妙なる彼等の出没

前記の親分対子分の関係は、妓館の抱主対妓女とは全然趣きを異にして居る。親方に抱えられて一定の利益を分配するといふ訳ではないのである、勿論親方は時に拠っては、其周旋料とが、売笑料の上前をはねるには相違ないが、収入の多い彼等は抱主のやうな残酷な取扱はせぬのである。子分は親方の家に居住するものもあるが、大概は他の家に住んで居る、用が出来ると、「お友達が来たからお遊びにお出」位の調子で呼び寄せるのであるから、一寸門外漢には解らぬのである。前の高等内侍は、容易に接近することは出来ないが、其他に第二流がある、是等は主として西城、前門外に巣窟を搆えて居る、東城には無いやうである、其親方株が有名なる者七八人有るといふことである。何れも相当の子分を持って居る、其数は一定してないが、一軒に二十人位を有して居るといふことである。此一派は、必ず引先を持って居る、其取引先は一先づ親方に申込み親方が周旋するやうになって居る、譬へば東方飯店、長安飯店、東安飯店とかいふやうなホテル擬ひの中西折衷旅館を初めとして、各支那高等旅館等である、旅館の帳場やボーイに連絡を持って居るから、旅客は勿論、ちよっと部屋借りをする者の為めに、何時にても要求に応ずるのである。

其希望に拠っては娘、年増、肥ったの、瘠せたの、丸ぽちや、面長勝手次第である。此中間には女学生、妾、娘、人妻等各方面に渉り、生活に困って淫を鬻ぐと、無聊を醫する為めに反って淫を買ふものとの二種がある、落魄せる満洲旗人の娘などが多い。中には学資を得んが為め、又は嫁入仕度の為めに身を汚す者があるといふが、いづれの国も同様である。だから姓名も住所も絶対秘密である。面子を重ずる支那人のことなれば、若し曝露すると大変であるから、女の家になどは絶対に近寄れぬのである。 一回四弗より六弗の相場、ショートタイムも泊込みも同様の値段であるが、成るだけ泊り込みを欲せぬものが多いといふことである。

九、私娼(密淫売)

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  3. 巧妙なる彼等の出没
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