愛犬に妓女を配する
下処に遊ぶ者は車夫、苦力、夥計の類で、邦人で此処に遊ぶ者は殆んど無いといふてもより外人使用の夥計が、雇主の金銭を窃取して逃走した時などは警察の手にて大概は此下処に於て捕縛さるるといふことである。苦力輩が劣情を充たす最下等の淫売屋であるから、或点に於ては人間扱ひにされて居らぬ。北京に居住する某外人が多額の金を与へて、盛りのついた其愛犬を、妓女に配したとかで、人道問題を惹起したことがある、西洋人の一団が、写真機を携へて面白半分に「春書」の材料にしたことなどは度々あつて、其都度支那新聞が憤慨して居るが、彼等は金次第で如何なる要求にも応ずるのである。
打茶園に要する一個包舗は三吊銭であるが、それは小下処の標準で、双五道廟及王家大院辺りは四吊銭を要求する、住下(泊り込み)には十五六吊から二十二三吊位の間であるが、普通は銀一元(現在の相場ては二十吊余)を投ずればそれで足りるのである。妓館に於ける分配方法は茶室と同様の標準である。朝陽門外の壇夾道や、西直門外の黄土坑や徳勝門外校場辺の如き城外は、主として城外の客種で遊興費も廉価である、徳勝門は黄寺や黒寺の喇嘛僧の遊ぶものが多い。
□女下処 静亭山人
旗鼓疆場戰策動、正愁禦敵力難分、如何鳥道摧軍後、又遇一班娘子軍。