花街の神様「白毛神」
迷信に至つては正月五日の早天に室外に出て神に会ふ「接路頭」を初め様々のことがあるが、その内で一番奇抜なのは、花柳界の神様「白毛神」を虚待することである。「白毛神」の本体は管仲である、支那に於いて妓女を設けた元祖として之を花街の神と奉つて居る、どうして「白毛神」といふかといふに、管仲は生れながらにして「陰毛が白かつた」と称されて居るからである。此神様は木製又は陶器にて作り、室中の便器の傍に置いある、妓女は朝起きると
我不給招財神爺、我打你嘴肥(わたしに宝の神様をくれねばお前さんを打ちますよ)
とやる、若し客が来なかつた場合は、神像を擲打し、又は大小便をかける、又は
我給你活魚吃、你総要対得起我、待両天辺給你魚、你記明白了別忘我的事、謝々你
といふ、この大意は「貴神に活きた魚を食はせる、好いお客様の来るやうにしてくだ さいそうすると又魚をあげますよ、忘れてはいけません」といふ意になる。斯うして先づ魚を口の辺に塗るが、若し客の無い場合は、前記と同様に虚待する。