支那の売笑
八、忌諱と迷信

妓館で忌諱する例

花街に於ける「迷信と忌諱」とは種々ある、近く刊行の予定である「支那の迷信」の中に詳記するつもりであるが、その内で心得て置くべきことを二三挙げて観る。妓館中にて最も忌み嫌ふものは

一、花妓の面前にて両手を組み、膝を抱くことである、之を北方では「抱波羅葢児」南方では「榼膝頭」といふ、之は猿の真似なりと解する者もあれば、人を蹴ることになるともいへば、又は自分を愛せず膝を愛する、他の者を抱くことは嫌だといふ意味となるそうである。之を「散小影児」ともいふ。

二、両手で背を負ふことも嫌ふ、縛られることを意味する。

三、妓女が拇指と中指とを捻るは「抱波羅葢児」の反対に男を嫌ふ合図となるそうである、是を「榧子」といひ、多く乾媽に「この客は大嫌ひ」だといふことを知らせる合図となる。又は戯談に 你別作這个様子、我很愛你給你一个榧子吃吧(貴郎はそんなことをなさるとこれよ)と右の容子をして見せる。単に「給你榧子」「貴郎に榧子を上げる」ともいひ、又は妓女が客を罵倒する時にも「これでも喰へ」日本で「尻でも食へ」といふやうな場合にも用ゆる。

四、拇指と小指とを曲げ、他の三指を伸ばして出せば、これも男を振る意味となるそうである。これを「忘八」といひ、お前は愚人だといふ表示となるそうである。

五、門を閉める際に燈を滅すことも忌んで居る。

八、忌諱と迷信

  1. 妓館で忌諱する例
    1. 抱波羅蓋児
    2. 給恁榧子
    3. 花街の神様
  2. 白毛神は管仲が本体
    1. 神様を便器の側に祀る
  3. 花柳界で持てる客
    1. 五字嫖経
    2. 水滸伝が本元
    3. 淫楽と仙人の境遇
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