十、花柳語集 文語の部
- 洪涯妓
- 三皇時代の妓女、支那に於ける最初の妓女との説もある(七頁参照)
- 女閭
- 斉の桓公初めて女閭を設く正史に現れたる支那最初の遊廓(七頁参照)
- 瓦舎
- 支那の遊廓の古称(八頁参照)
- 女楽
- 妓女の前身(九頁参照)
- 北里の舞
- 殷代に起った淫靡な女舞(九頁参照)
- 夜合の資
- 管仲が女閭より徴したる支那最初の花柳税(十一頁参照)
- 脂粉銭
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夜合の資と同様(三十一頁参照)脂粉はベにと、おしろいのこと。史記侫幸伝に「伝脂粉」とあり。准南子に「不待脂粉芳沢」とある。
- 営妓
- 漢の武帝軍士を犒ふ為めに設けたる官妓(十八頁参照)
- 平康里
- 唐代に設けたる遊廓、現在遊廓の代名詞となる(二十三頁参照)
- 北里
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いろざと、花柳の巷、妓院の所在地をいふ。平康里と同様に、北里より転じて日本では花街を北廓ともいふ。
- 教坊
- 倡優を集めて歌舞を教へたる所(廿五頁参照)
- 声妓
- 女楽の別称(廿六頁参照)
- 宜春院
- 唐代に出来た官妓を取締る官署(廿六頁参照)
- 娼妓
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娼妓は「倡伎」に同じ、倡はわざをぎ、妓は「あそびめ」「うたひめ」のことをいふ、娼妓は音曲歌舞を以て酒席の興を助け、又は色を売る女をいふ。女優を倡といひ男優を優ともいふ、史記に「吾聞楚之鉄剣而倡優拙」とある(廿七頁参照)
- 倚門献笑
- 門に倚って笑を売ること、売笑婦の形容詞(三十一頁参照)
- 楽戸
- 妓館のこと(三十一頁参照)
- 女市
- 北史に「亀茲国俗性多淫置女市、収男子銭以入官」とある。
- 女肆
- 唐書西域伝に「葱嶺以東、俗喜淫、亀茲于闘置女肆、征其銭」とある。
- 紅裙
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紅き裙より転じて、唐宋時代より妓女の称となる。杜甫の詩に「越女紅裙濕、燕姫翠黛愁」とあり白香山の琵琶行には「血色羅裙翻酒汚」とあり、東坡の詩にも「更将文字惱紅裙」とある。
- 青楼
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最初は美人の居を称す、曹植の美女篇に「青楼臨大路、高門結重関」とある、転じて遊女屋となる。粱の劉邈の詩に「倡女不勝愁、結束下青楼」とあるのが娼妓の居を青楼といった嚆矢らしい。
- 校書
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鑑戒録に「蜀人呼営妓為女校書」とあり、王建の詩に「万里橋辺女校書」とある、通称妓女を「校書」といふのは、これから来て居る、唐代蜀に薛濤といふ文才ある妓女ありて書類を校正せる故事に本づく。
- 妓航
- 妓女を載せた船、粱元帝の詩に「荷生夾妓妓」とある。
- 妓楽
- 妓女のかなでる音曲、劉憲の詩に「開筵妓楽陳」とある。
- 流連
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日本で遊女屋に居連けするをいふ、支那でも其意味に使用する。孟子の粱恵王に「先王無流運之楽、荒亡之行」から来て居る。
- 肉障
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開天遺事に「楊国忠冬月、選婢妾肥大者、行列于前令遮風、謂之肉障」とある。
- 肉屏風(肉陣)
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開天遺事に「楊国忠冬月設妓囲以取暖、号日肉屏風又名肉陣」醒心集に「杭州別駕杜馴亦有肉屏風」とある。
- 妓囲
- 天宝遺事に「唐申王冬月苦寒、令宮女密囲而坐日妓囲」
- 肉手爐
- 天宝遺事に「唐岐王毎冬月、于美婢懐中暖手、謂之肉手爐」とある。
- 肉台盤
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楊国忠は毎食食盤を用ひず、衆くの妓妾をして肴饌を執らした。之を「肉台盤」といふ。
- 肉吐壷
- 明の厳世蕃は妓女の口を吐壷に代へしめた。之を「肉吐壺」といふ。
- 肉双陸
- 王天華は世蕃に媚びて美女三十二人を紅素各半にして地衣を織成した。之を「肉双陸」といふ。